佐野元春さん
10年以上、手元にあって、再聴に耐え抜いてきた音楽。
その1。
sweet16/佐野元春
(他のいくつかのアルバムを代表して)
この人の音楽を知ったのは15才の夏。
高校三年間を使って、
1時間のアニメーション作品をたった一人で作ろうとしていて(無謀もいいとこ。知らないってことは恐ろしい)、頭の中はそのことでパンパン、残ったキャパは友達とバイクと女の子のことで占められていた。
音楽の入り込む隙なんて無かった。
ある日、同じクラスのヤツが
聞いたことのないフレーズを口ずさんでた。
「何それ?ヘンな歌」と笑った。
そいつがテープを貸してくれた。

佐野元春「NO DAMAGE」。
それでやられた。
虜になった。
ダビングして繰り返し聴いた。
歌詞を全部覚えてしまった。
同じ頃、
学園祭で先輩の撮った実写映画を見た俺は、
アニメーション制作の計画を放り出してバイトバイトバイトしてカメラと映写機を手に入れて所属していた美術部をやめて面白そうなヤツらを集めて映画同好会を立ち上げて部室と部費をゲットして受験を無視して授業をサボって絵コンテと撮影と編集にのめり込んで仲間といっしょに作品を撮りため三年の時の学園祭で上映会をブチかまして開場待ちの人の列が廊下の端までズラッと並んでプログラムを三回まわして三回とも立ち見が出て大トリのサスペンス映画のラストで最前列の女の子たちが肩を寄せ合い悲鳴を上げるのを映写機の後ろで見つめながら「映画の大学に行こう」「映画監督になろう」と本気で思ってしまったのだけれど、
そんな高校生活の間、
佐野さんの音楽はいつも俺のすぐそばにあって、
パワーとインスピレーションを
たくさんたくさん与えてくれた。
大阪の大学に進学して
京都の撮影所に就職して
東京でフリーのADになって
仕事の合間にシナリオを書いて
自分がなりたくて仕方ないものに
全てのエネルギーを注ぎ込んでいた
俺の二十代前半は、
とっても幸運なことに
佐野さんの絶頂期と重なっていた。
そのことに心から感謝している。

「VISITERS」

「カフェ・ボヘミア」

「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」
「THE CIRCLE」
「SWEET16」
「フルーツ」・・・。
毎年のように発表される佐野さんの新譜は、
時に不安に押しつぶさそうな俺の心に勇気をくれ
時にダラけた俺のケツを力いっぱい蹴り飛ばして、
次のステップに足をかけ、踏み出していく力をくれた。
たくさんのCDを
持っていた時期もあったけれど、
時を経て、今、側にあるのは、
数人のミュージシャンの作った
十数枚のアルバムだけ。
その三割近くが佐野さんのものだ。
最近の佐野さんは高音域の声が出ない。
新曲の中にかつてのようなシャウトはない。
聞いた話だと、
ツアー中に喉を痛め、
それでも観客のために無理をして
声を振り絞ったせいだという。
それが事実なら、
本当に残念だ。
でも、佐野元春らしい、とも思う。
再デビュー中の今、
仕事中に佐野さんの曲を良く聴いている。
そして、十代の終わりから二十代前半にかけての気分
(アスファルトの焼けた夏の道を400ccのバイクに跨り
フルスロットルのアクセルでブッ飛ばしていくような)
を、強く思い出している。
夢を見た 昨夜のこと
ブルーな夢 But it's all right
電話してほしい 見知らぬ夜
誰かの声がききたい
冷たいニュース 今朝のこと
テーブルの上にはチーズ&ワイン
平和もない 静けさもない
笑い飛ばせるほど無邪気じゃない
いつもほんとに欲しいものが
手に入れられない
あいかわらず今夜も口ずさむのさ
99blues 99blues
誰もいない 地下鉄のプラットホーム
かかえこまれそうなエモーション
彼女のbody 彼女のvoice
去年の夏がなつかしい
愛してる愛してる愛してる
誰もがたやすく口にする
すてきなビジネスのセクシャリティ
街の子供たちは眠れない
いつもほんとに欲しいものが
手に入れられない
あいかわらず今夜も口ずさむのさ
99blues 99blues
全てはmoney この街はfunny
いつも悩ませる
大切なキャッシュカード クレジットカード
永遠に夢は買えない
得意げな顔したこの街のリーダー
シナリオのチェックに忙しい
ユーモアもない 真実もない
フェイクしたスマイルはとても淋しい
フェイクしたスタイルはとても淋しい
いつもほんとに欲しいものが手に入れられない
あいかわらず今夜も口ずさむのさ
99blues 99blues
この街のルール この国のルール
家庭のルール 教室のルール
一つの形じゃ踊れない
このままじゃはみ出してしまいそうさ
夢を見た 昨夜のこと
ブルーな夢 But it's all right
電話してほしい 見知らぬ夜
誰かの声がききたい
いつもほんとに欲しいものが手に入れられない
あいかわらず今夜も口ずさむのさ
99blues 99blues
99blues /作詞・作曲 佐野元春
佐野さんの作る音楽は、餌じゃない。
そういうものを
できるなら俺も作っていきたい。







































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